M-1グランプリ2019決勝の感想文

M-1グランプリ2019決勝を見た感想を書きます。

ネタごとに自分の点数と批評も書きます。個人の意見を勝手に書いてるだけなので見て不快な気持ちになったらすぐ読むのをやめていただければと思います。

自分よりはるかに面白い芸人たちを上から目線で点数つけて何様だ、評論家気取りか、という意見もあると思いますが、俺はこういうM-1の楽しみ方もあると思ってやってるだけなのであしからず。このブログを読んでる人は、わざわざこの記事を探し当てて勝手に読んでる人だと思うので文句は言われないと思いますが。

 

1 ニューヨーク「ラブソング」91点

最高のトップバッターだった。

91点は、爆発力はあまりなかったけれど、ネタの内容が序盤・中盤・終盤と全部隙がなくて、弱いボケもほぼなくて飽きさせない作りになっていて完成度の高さを感じたので90点。トップバッター補正で+1点。という感じでつけた。

歌ネタは、そもそも高得点を取るのが難しいと思う。なぜなら歌というレールが敷かれてる以上、レールからあまりに逸脱したボケはできないし、手数も出せないから(手数が出せないから歌ネタは天丼が多い)。そういうハンデがあるのにもかかわらず、ニューヨークのこのネタは色んな角度のボケが次々と出てきて本当に飽きなかった。序盤は歌詞でボケ、サビでシンプルバカなボケ(ラッキーボーイなど)、間奏では屋敷の偏見ツッコミがあり、終盤は女が出てくる変化や、踊りで畳み掛けて盛り上げる構成になってて、歌ネタ漫才として完璧だったんじゃないかな。

強いて言うなら、オリジナルで曲を作ったと振ってたのに、かなり聞き覚えがあるメロディだったことが残念。途中で「これ〇〇の曲だろ」ってツッコむのかと思った。

 

2 かまいたちUFJ」93点

2番手でもうかまいたちか、と思った。

ネタは、準決勝でやったトトロではなく「UFJ」。言い間違いを絶対に認めない男。圧倒的に不利な状況なのに勝とうとしてる奴。設定だけ聞いたら4分持つわけないと思うのに、4分笑いが持続する不思議。それだけ山内のキャラクターや台詞回しにセンスが溢れてるということだと思う。タイムラインを見てて、何人かは山内のキャラが苦手で笑えないっていう意見を言っていたけれど、俺は山内はうまくギリギリ嫌われないラインを行ってると思っている。まず、圧倒的に山内が不利な状況にある点。山内がどれだけ言葉をまくしたてたとしても濱家との力関係はひっくり返らないという安心感があることによって笑いやすくなってる。もし一瞬でも山内が濱家を論破できてしまったら不快感がかなり大きかったように思う。そういえば、去年の「タイムマシン」は山内が終盤、濱家を論破してしまっていた。俺は山内が論破するっていう展開は立場逆転の面白さもあって好きだったけど、あまり評価が伸びなかったのは山内が勝つという納得のできなさが原因だったのかもしれない。

なんで93点をつけたのかだけど、こういう水掛け論のネタって、言い合いになって普通は終盤だれると思う。でも、このネタは終盤が面白い。しっかり山内のやばさを浸透させてからの、無に話しかけるくだりと、意味のわからない日本語を言ってくるくだりが最高に面白い。ここの爆発力を評価して93点。序盤中盤にもっと意外性のあるボケがあったら95点をつけていたかもしれない。

 

書くのめんどくさくなってきたのでこれ以降適当になってるかも

 

3 和牛「内見」92点

3番手で敗者復活を引く。勝ち上がりは予想通り和牛。

ネタは敗者復活と同じ内見のネタ。このネタ、天丼なんだけど構成がめっちゃ巧みで1回1回味わいが違う。それがわかりやすく出てるのが下り最後の「おじゃましました」で、1回目は水田だけ挨拶で川西はツッコミ、2回目は二人とも挨拶、3回目は川西だけ挨拶っていうズラしとして綺麗すぎる順序。そして、住んでるボケをひとしきりやった後の、ボロボロの家を紹介されるくだりがすごい。こんなに天丼を重ねていたら、出せるボケの種類がなくなってネタが失速するのが普通なんだけど、このくだりでツッコミがボケに裏返る。そこで最大の盛り上がりが来るようになってる。正直ツッコミがボケに転じるのは観客を突き放す可能性があるから危なくて、実際このネタでも「もっとツッコむところあるだろ」って思う場面はあったんだけど、川西がとにかく誰も住んでない家を要求するっていう丁寧なフリとなる前半部分があるからこそ出来る技だと思う。

本当にかまいたちとニューヨークの間くらいの面白さだったので92点。後半部分が突き抜けるほど面白い可能性を持ってたんだけど、やっぱりツッコミがツッコミしない違和感とか、あと途中の金縛りのところでコントじゃんって思っちゃったので突き抜けなかったかな。

 

4 すゑひろがりず「合コン」88点

めちゃくちゃ面白かった。

めちゃくちゃ面白かったが、漫才の大会でこれをやってるというのがめちゃくちゃ面白くて、結局それありきだから、他の正統派の漫才師を評価しないですゑひろがりずだけを評価するということは俺はできないと考えて、辛めに88点をつけた。正直、すゑひろがりずへの90点は他の組への95点レベルに相当すると思う。だからM-1の審査員がつけた点数はめちゃくちゃ高得点だったと俺は思います。

 

5 からし蓮根「教習所」91点

この順番で引かれた時、和牛と露骨に比較されるだろうなと思った。結果、比較されて審査員に控えめに点数をつけられたと思う。からし蓮根は1個1個のボケ・ツッコミで勝負するタイプで、対して和牛は構成の巧みさと引き込む演技力で勝負するタイプだから、和牛と比べると荒削りに見えてしまったんだと思う。

からし蓮根は準決勝1ウケで、全ボケ面白いと思ってたけど、この順番、この舞台でやると弱く感じるボケもあって、なるほどなと思った。特にツカミが、ツカミにしては急なボケだったなと思った。

でもやっぱり最後のくだりはめちゃくちゃウケていた。まだ俺は全ボケ面白いと思っているので、91点。

 

6 見取り図「相方を褒める」90点

このネタを準決勝で見た時、新しいことをしてるし面白い、と思った。みやすい対立構造になってるしテンポもいい。でも、なんとなく決勝進出の予想には入れなかった。

決勝でこのネタを見た時、何があまり俺にハマらなかったのか気づいた。このネタは顔いじりを主軸のボケにしていて、後半とかはほとんど顔いじりのボケだった。確かに面白いけど、顔いじりのボケはあんまり好きじゃないんだなと思った。

でも、構成の良さは評価したいので90点。

 

7 ミルクボーイ「朝ごはん」96点

ミルクボーイはもうちょっと後ろの出番の方がウケるんじゃないかなと思ったけど、蓋を開けて見たら全ボケ拍手笑い。すごすぎませんか?

ミルクボーイは同じ手法でいろんなネタがあるけど、このネタはあるあるが洗練されすぎてるのがすごい。全ボケ、種類はちょっとずつ違うのに強いあるあるになってる。たぶんこれは題材が良すぎたゆえの突然変異みたいなものだと思う。俺もフリップネタ作っててたまにある、突然変異でめちゃくちゃ面白くなる現象。それが4分という単位で起こったものすごい奇跡みたいなネタだと思う。

すごすぎたので96点です。

 

8 オズワルド「先輩をたてる」92点

これはただの予想なんだけど、このネタ「縦回転寿司」の部分を最初に思いついてそこからネタを作ってると思う。縦回転寿司を最もウケるようにした構築のネタというかそんな感じがした。全てのボケ、くだりが縦回転寿司への前振りになっているように感じられる綺麗なネタだと思う。いっそネタのタイトルが「縦回転寿司」でもいいと思う。

それは言い過ぎだとしても、このネタは無駄なくだりがないすごいネタだと思う。ミルクボーイの影響で印象が薄れた感じはしたけど、全ボケ面白いと思うので92点です。

 

9 インディアンス「おっさん女子」85点

最初に言っておきますが、俺はインディアンスのネタのアンチです。ただ嫌いではないし平場のインディアンスは好きです。

このネタも、いつものインディアンスと変わらず田渕がたくさん喋ってるだけであまり笑わなかった。なんでインディアンスのネタが面白くないと感じるかというと、俺が思うに、田渕が喋りすぎなところだと思う。もちろん田渕のマシンガンボケが強みだし、そのスタイルを批判してるわけではない。ただ、圧倒的に会話が下手くそだと思う。きむが話題提起してそれを聞いた田渕が突っ走って、きむが止める。それだけ。田渕がきむの話を全く聞かずに1人でただボケてるだけだし、それに対してきむは気の利いたツッコミをしない。そういう台本になってる。俺はもっと会話をするべきだと思う。きむがもっとツッコむべき。あと思うのは、ボケに深みがない。ずっとレベル1のボケをしてる。これは大した会話をしてない影響も大きいと思う。ボケのフリが全然ない。もっとオズワルドのように会話してたらどんどん変な方向に進んでいってしまうような漫才や、和牛のように少しずつコント内のストーリーが進んで後半で盛り上げるような漫才とまでは行かなくても、話が進展するような漫才を書いてほしいと思う。

 

10 ぺこぱ「タクシー運転手」92点

ツッコまないツッコミなんだけど、その裏切り方が素晴らしい。松陰寺の言ってることに筋が通ってるというのが大きいと思う。「人を傷つけない笑い」とよく言われているが、松陰寺のツッコミはシュウペイに対する優しさを一貫して追求しているからこそまとまりがあって、松陰寺がツッコむたびに笑いの量が増えていったんだと思う。一貫性大事。

あと、「人を傷つけない笑い」ってみんな言ってるけど、俺は実際は違うと思っている。ぺこぱの優しいツッコミの笑いっていうのは、「観客がシュウペイをバカだと思う」という前提があって、それを松陰寺ただ一人だけがフォローすることで裏切りが発生し、初めて成立する笑いだと思う。だからこの笑いは、決して人を傷つけない笑いではなく人を無意識にバカにして傷つけるという前提のもとに作られた笑いだと思う。

なんで92点をつけたか覚えてないけど、笑いの総量的に92点だと思ったのかな。前半のウケがそこまでだった気がする。

 

最終1 ぺこぱ「電車で席を譲る」94点

2本目が1本目を超えてきた。これは同じスタイルの漫才を2本披露する漫才師にとってマジでめちゃくちゃすごいこと。マジですごい。2015のジャルジャルは2本目失速したし、今年のミルクボーイですら1本目の方が強かった。これがめちゃくちゃすごいということは、ずっと言っていきたいと思う。

1本目が2位とかだったら優勝してたんじゃないか?

 

最終2 かまいたち「自慢」92点

1本目よりちょっと弱いけど、でも山内のボケ方のバリエーションの多さがすごい。1本目と同じような議論のネタなのに、全然違うボケ方を入れてくる。息継ぎとか。そういうボケをたくさん作ってるのがすごいよなー。

 

最終3 ミルクボーイ「和菓子」92点

モナカの家系図ツイッターで流行ったとこまで込みで完璧な優勝です。

 

よしとりあえず全部書いたから、ようやく他の人の感想を読めるぞー。